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水質汚濁防止法


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水質汚濁防止法(すいしつおだくぼうしほう、昭和45年(1970年12月25日法律第138号)は、昭和46年(1971年6月24日に施行された公共用水域の水質汚濁の防止に関する法律。最終改正は、平成18年(2006年)6月14日。

昭和33年(1958年)に制定された前身の公共用水域の水質の保全に関する法律(水質保全法)および工場排水等の規制に関する法律(工場排水規制法)は、この法律施行に伴い廃止された。

目的


工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び地下水水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする(第1条)。

内容


水質汚濁防止法では、水質汚濁防止法施行令で指定された「特定施設」を設置している「特定事業場」からの公共用水域への排出、及び地下水への浸透を規制している。

規制項目

(1) 健康項目(令2条)


「特定施設」(施行令別表第一)の、人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質(重金属有機化学物質など)

(2) 生活環境項目(令3条)


「特定施設」(施行令別表第一)の、水の汚染状態を示す項目(pHBODCOD浮遊物質量、大腸菌群数など)、ただし規制対象は排水量が一日平均50t以上

(3) 総量規制


「指定地域特定施設」からの排水(東京湾伊勢湾瀬戸内海と関係のある地域)

(4) 地下浸透水の規制


特定施設」からの排水に関して、「健康項目」に定める有害物質下への浸透の禁止

刑事・行政上の措置


  • 規制事業者の排水基準(「排水基準を定める省令」-S46内閣府令35号)順守義務  →罰則(31条)
  • 規制事業者の排水測定、記録の3年間保管義務(14条)  →罰則(33条)
  • 都道府県知事の排水監視義務(15条)
  • 都道府県知事の改善命令、排水停止命令(13条)  →命令違反の罰則(30条)

民事上の措置

「無過失責任主義」の導入(19~20条)


元来、加害者に故意又は過失がなければ、民事上の不法行為は成立しない(過失責任主義)が、本法においては、被害の甚大さを重く見、被害者の保護を図るため、例外的に加害者の故意・過失を問わず加害者の法的責任を追及できる「無過失責任」を規定している。言い換えればその分、加害者となり得る事業者は、特に重い管理責任を課されていると言える。実際に無過失責任の規定が適用される状況としては、有害物質を含む水を、1)公共用水域(河川・湖沼・沿岸等)に排出した場合、2)地下に浸透させた場合、が考えられる。現在では排水の監視等が厳しく、それによる健康被害の発生もほとんどないと考えられる。よって現実的には、監視の目が行き届きにくい状況である地下浸透による地下水汚染について、特に強く無過失責任の規定が適用されると考えられる。なお水質事故(河川に有害物質が流出する)を誤って発生させた場合も、当然ながら無過失責任が適用される。水質事故の場合、河川管理者や関係機関が行った対策・処理について、原因者に費用負担を求めることができるとしている(河川法第67条) 。

無過失責任とは、「損害が発生した場合には、故意または過失がなくても賠償責任を負うという原則」。この無過失責任は、民法過失責任の原則の例外となるものであり、私法の法体系全体にかかわる問題である。しかしながら私法的な面においても、事業者の責任を強化して、被害者の円滑な救済ができるような措置、すなわち事業者の無過失損害賠償責任制度を創設すべきであるという強い社会的背景をうけ、「大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律」(昭和47年法律84号)により無過失責任を制定した。本改正法により制定された内容は以下のとおりである。

  1. 工場または事業場における事業活動に伴って人の健康に有害な一定の物質が大気中に、または水域等に排出されたことにより、人の生命または身体を害したときは、当該排出に係る事業者は、故意または過失がない場合であっても、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずることとした。この場合の有害物質とは、大気汚染防止法および水質汚濁防止法において人の健康に被害が生ずるおそれがある物質として規制の対象とされているもので、硫黄酸化物複合汚染を常態とする物質をも含めることとした。
  2. 損害が2つ以上の事業者の共同不法行為によって生じた場合において、その損害の原因となった程度が著しく小さい事業者があるときは、裁判所は、その者の損害賠償の額を定めるについて、その事情を斟酌することができる途を開いた。
  3. 無過失責任は、この法律の施行の日以後における有害な物質の排出による損害について適用することとし、遡及はさせないこととした。

条例との関係


本法は適用対象で施設や排水量に条件があるなど、限定的な規制であるため、地方自治体条例による「横出し規制」を認めている。また、全国一律で最低限の規制を定める趣旨であるため、同様に地方自治体の条例による「上乗せ規制」も認めている。実際、何らかの「横出し規制」「上乗せ規制」「脚きり規制」を定めている地方自治体は多い。なお、下水道への排出水は、下水道法で規制している。

水質汚濁防止法の性格


水質汚濁防止法は、その名前から水質汚濁防止の基本法のように誤解されることが多いが、規制対象の施設や排水量等により、限定的に適用される規制である。ゆえに、規制値を大きく超過した排水が放流し続けられていても、水質汚濁防止法の条文における特定施設に該当しない等の理由で水質汚濁防止法は適用されないということもある。そのような規制のもれについては、法の趣旨に鑑み、先述のとおり自治体条例の横出し規制などで補完が試みられていることが多い。また、排水方法によっては、下水道法浄化槽法等の規制対象となることもある。水質汚濁防止のための規制体系は、これらの複数の方法の組み合わせによる複雑で総合的な規制となっている。

制定の背景


水質汚濁防止法が制定されるまでは、昭和33年(1958年)に制定された公共用水域の水質の保全に関する法律(水質保全法)、工場排水等の規制に関する法律(工場排水規制法)によって、規制が行われていた。これらの法律は、1950年代初期から問題となっていた水俣病及びイタイイタイ病への対策として制定された。しかし、規制水域や規制対象業種を個別に指定するため、実効性が不十分であり、1960年代になっても、第二水俣病のような公害が発生し、水質汚濁の未然防止ができなかった。このため、排水規制のしくみを全般的に強化するため、昭和45年に制定されたのが、水質汚濁防止法である。昭和45年の水質汚濁防止法では、水質保全法、工場排水規制法を一体化し、これらの法律で行ってきた個別に水域指定をすることを廃止し、全水域を対象とする一律の排水基準の設定をおこなった。また、地方自治体の権限強化を行い、条例による上乗せ排水基準の設定、排水基準違反に対する直罰等を盛り込んだ内容となった。

構成


  • 第1章 - 総則(第1条~第2条)
  • 第2章 - 排出水の排出の規制等(第3条~第14条の3)
  • 第2章の2 - 生活排水対策の推進(第14条の4~第14条の10)
  • 第3章 - 水質の汚濁の状況の監視等(第15条~第18条)
  • 第4章 - 損害賠償(第19条~第20条の5)
  • 第5章 - 雑則(第21条~第29条)
  • 第6章 - 罰則(第30条~第35条)  

所轄官庁


排水監視の徹底と新たな公害防止体制


  • 平成17年3月環境省は、JFEスチール東日本製鉄所と昭和電工千葉事業所の2社の水濁法違反事件発生を受け、都道府県と水質汚濁防止法上の政令市に対し、水濁法に基づく事業所への立入り検査を行う場合の監視指導徹底を図るよう通知水質汚濁防止の徹底に関する通知について(平成17年3月18日):環境省した。これら2社は、長期間にわたり違法排水を流すとともに、排水分析データの虚偽記載・報告を行い、悪質な公害隠蔽工作を行っていた。今回の通知ではこれらの企業犯罪を踏まえ、以下の点を確認することとした。
    1. 複数の人間が測定結果をチェックする体制になっているか
    2. 排出水測定結果の原簿と届け出値の差異
    3. 自動計測器指示値と届け出値の差異
    4. JFEスチール東日本製鉄所で見られたようなスラグ堆積場浸出水管理不備の有無

  • 平成18年4月環境省は、JFEスチール昭和電工の悪質な水濁法違反を受け、自治体が水質汚濁防止法に基づく立入検査を行う際の参考となるように、基本的な考え方や具体的な留意事項をまとめた「水質汚濁防止法に基づく立入検査マニュアル策定の手引き」を作成し公表「水質汚濁防止法に基づく立入検査マニュアル策定の手引き」等について(平成18年4月20日):環境省した。手引きの内容は、平成17年3月の立入検査の留意点通知に対する対応、また立入検査計画作成時・検査の事前準備時・検査実施時・検査後の各段階の業務の基本的な考え方・留意事項に加え、携行品・書類上で確認すべき事項・特定施設・排水処理施設・排水口・排水経路のチェックポイントが具体的に示されている。

引用


関連項目


外部リンク



日本の環境法
水質汚染
化学物質関連法
獣医畜産関連法規



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』